北海道礼文島移住雑感:どこに「地域おこし」のゴールを設定するか?
(写真は秋の猫岩)
こんにちは。地域おこし協力隊のはやとです。今日は「地域おこし」について、私自身の頭の中を整理するために文章を書いていきたいと思います。
今更ですが、私は日本最北限の有人離島・礼文島で「地域おこし協力隊」をやっています。「地域おこし協力隊」とは、文字通り捉えれば「地域おこし」に協力する仕事をする人です。
他地域の協力隊員の成功事例などに目を向ければ、古民家を改装してゲストハウスを作ったり、SNS等を用いた地域の情報発信、農業などの1次産業をブランディングなどをして付加価値をつけた商品にする、などの例がよく言われます。
地域おこしには、これらのモデルケースが存在するので、様々な自治体が「わが町も」と言って似たような取り組みをしてみたり、協力隊員になった人が成功事例(あるいは成功させた人)に感化されて似たような取り組みをしているのだと思います。そのすべてがうまくいっているのかどうかはわかりません。
協力隊活動は、協力隊員の興味・関心・やりたいことなど、属人的な要素が占める部分が少なくないと思います。とりあえず、上記のようなモデルケースはあるので、それらに取り組むのもいいとは思います。
しかし、私個人の性格として世の言説に対して「本当にそうなのか?」と考えてしまうところがあり、また、活動する場所が東京から遠く離れた礼文島ということもあります。
そこで、中央で組み立てられたセオリーを一旦脇に置いて、礼文島の地域住民が何を求めているかを調べるために、2017年9月に礼文町役場の協力の下、大規模なアンケート調査を開始しました(配布数;619世帯。島の全人口は8月末現在1,321世帯)。
(説明資料)
地域おこし活動に従事する前に、「地域おこし」とは何かを考えたいと思ったのです。この作業は、地域おこし活動に取り組むようになっても並行して行うことになるでしょう。
「地域おこし」とは何かを考えるため、今回はゴールをいく通りか設定し、その観点にしたがって考えていきたいと思います。
(1)地域が経済的・財政的に豊かになるのが「地域おこし」
行政担当者が一番好きなのがこの考え方だと思います。理由はおそらく、そのわかりやすさにあると思います。行政は住民の税金から成り立っており、公平性の大原則があるため、所得などの数字で表すことのできる経済的な効用は住民に説明しやすいのだと考えられます。「経済的発展=善」という図式は、私たちの社会でかなりの程度のコンセンサスを得られているため、説明しやすいと考えられます。
定住人口の増加を願うのも、労働力が経済的豊かさにつながるからでしょう。1次産業の6次産業化も、このパターンに当てはまると思います。
(2)地域の「つながり」が増えるのが「地域おこし」
「地域おこし」が集落機能の維持の困難さに対抗するものであると考えるならば、地域の「つながり」、あるいは地域住民同士の「つながり」を増やすのが地域おこしであると考えられるでしょう。こうした「つながり」を資産と捉えた場合、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と呼ばれます。集落機能の維持の方法を、行政組織などの専門的な組織によるのか、町内会などの地縁的な組織でやるのかで、協力隊の活動方法は変わってくると思います。
たとえばコミュニティカフェの運営が目指すところが、このパターンに当てはまると思います。
(3)個人の「幸福」が増えるのが「地域おこし」
(1)、(2)は地域の側から地域おこしを考えましたが、地域社会が個人の総体であると考える場合には、個人の「幸福」を増やす活動をすることが「地域おこし」につながると考えることができます。前述のゲストハウスの例は、ゲストハウスの運営によって協力隊を含む住民の幸福度を上げるのを目的とする場合、このパターンに当てはまると思います。
上記(1)〜(3)はもちろん排反ではなく、それぞれが重なる部分が大いにあると思います。
(1)〜(3)のどれを重視するのかは、協力隊が持つ価値観によって変わると思います。
ところで、最近私が関心を持っているのが、(2)・(3)とつながってくるのですが、閉じたコミュニティ同士の関係性についてです。
一口に「地域住民」と言っても、様々な人がいると思います。先祖代々その地域に住んでいる人、都会から何かを求めてきた移住者。時として、それらの人々は異質であったりすると思います。「地域」といっても、移住者のコミュニティや地元民のコミュニティなど、いくつかのサブグループに分けることができると思います。
そうした仮定のもと、一部のコミュニティを盛り上げることが「地域おこし」なのか、コミュニティ同士の関係性を円滑化させることが「地域おこし」なのか。現在の私は後者の方に傾いています。(その理由は私個人の考え方にあり、アメリカにおいてトランプの大統領選勝利が私にもたらしたショックがもとになっています)
そのため、私が設計したアンケートでは、異なる性質を持つ人々同士のつながりが持つ構造を調べることをテーマのひとつに据えました。
まだまだアンケートの回収・分析はこれからですが、引き続き地域おこしについてゆるく考えていきたいと思います。